地球温暖化は人類にとっての福音

●地球温暖化と食糧生産

前回、前々回の記事では、川島博之先生の分析を紹介し、「世界人類に食糧不足の心配はない」と論じた。
ただしそこには一つの条件がある。
「世界人口に対して食糧生産力は十分」という結論は、地球が将来にわたって大きな環境変動に見舞われないという前提があっての話なのだ。
ところがご承知の通り、世界は今、温室効果ガスによる気温上昇の危機にさらされている。
この気候変動が食糧生産に影響を与えることはないのだろうか。
あるいは食糧とは別の面から、地球温暖化が人類の生存を脅かすことはあるのだろうか

温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)の解析によれば、世界の大気中の二酸化炭素濃度は、1960年には317ppmだったが、2000年には370ppmを超え、2017年には前年と比べて2.2ppm増の405.5ppmとなった(気象庁 『二酸化炭素濃度の経年変化』 による)。
二酸化炭素には地球から宇宙への熱放射を妨げる温室効果があり、その濃度の上昇は地球の平均気温を上昇させると考えられている。

地球の平均気温は1890年以降、100年あたり0.73℃の割合で上昇している。(気象庁『世界の年平均気温偏差の経年変化』による)。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の2018年10月の会合では、「現在の世界の気温は工業化以前に比べて約1度上昇しており、現状のまま推移すれば2030年から2052年の間にその上昇幅は1.5度に達する可能性が高い」とされた(『第48回 総会政策決定者向け要約』 より)。
2018年の場合、地球の平均気温(陸域における地表付近の気温と海面水温の平均)の基準値(1981~2010年の30年平均値)からの偏差は+0.31℃で、1891年の統計開始以降、4番目に高い値となった。
21世紀末における世界の年平均気温は、20世紀末と比較して、0.3から4.8℃の上昇が予測されている(環境庁ほか『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~』より)。

この気温上昇は一般に、世界の農業に悪影響を及ぼすものと予測されている
2017年に米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された「気温上昇は四つの独立した評価において主要作物の世界的収量を減少させる(Temperature increase reduces global yields of major crops in four independent estimates)」というレポートは、気候変動が世界的あるいは局地的規模で農作物に与える影響のシミュレーション、天候と収穫量の過去データに基づく統計モデル、人工的に温暖化を発生させる実証実験等、これまでに行われた地球温暖化と農業に関する研究70以上を検証し、「過去の研究のほぼ全てで、気温の上昇は小麦、米、トウモロコシの世界の収量に悪影響を与える可能性が高いことを示唆している」と結論している。
地球温暖化と作物の収量予測についての過去の研究を総合すると、「摂氏1度の世界平均気温の上昇により、世界の平均小麦収量は6.0%、米は3.2%、トウモロコシは7.4%、大豆は3.1%、それぞれ減少する」と考えられるという。

最も収量減少の大きいトウモロコシを国別に見ると、アメリカが摂氏1度あたり-10.3±5.4%、中国が同じく1度あたり-8.0±6.1%、ブラジルが-5.5±4.5%、インドが-5.2±4.5%、フランスが-2.6±6.9%など。
国を問わず、地球温暖化は一貫して生産にマイナスに作用するとしている。

なぜ気温が上がると収量が減るのか。
普通、大気中のCO2濃度が上昇すると植物の成長は促進されるものだが、多くの研究ではそれより気温上昇で穂先の温度が上昇して生育不良になる、熱波でダメージを受ける、害虫や病害が増える、気温上昇で土壌水分が減少するといったことがマイナスに作用するとみている。
また気温が上がると降水量も変化するはずだが、これについては「予測が不確実」という理由で収量算定要因から除かれることが多いという。

こうした分析はどこまで正確なのだろうか。

●地球が温暖化すると農業生産力は大きく高まる

実は「温暖化が食料生産に打撃を与える」という問題提起に対しても、川島先生は食糧問題の専門家の立場から、完全に否定的である。
川島先生は大学に移る前、農林水産省の農業環境技術研究所の地球環境研究チームに在籍しており、地球温暖化と農業生産高を研究テーマとしていた。
システム分析の手法を用い、温暖化による農産物の生産量の変化をシミュレーションした結果を『地球温暖化による主要穀類栽培可能地分布と潜在生産力の変化』というタイトルで発表している。
このときチームが達した結論は、
地球が温暖化すれば、農作物や漁業など食糧の純1次生産量は現在より167%増加する
というものだった。
全体で267%、つまり「現在の倍以上に食糧生産力が増す」ということだ。
世の中で主流となっている「地球温暖化が起これば世界の農業生産は大きな打撃を受ける」という見解とは、まさに正反対の内容だ。

なぜそんな真逆の結論になるのか。
実は「温暖化で穀物生産が打撃を受ける」という研究を調べると、どれも例外なく、「温暖化後も現在と同じ生産地で同じ作物を栽培する」という前提に立っているのだという。
現在、世界で栽培されている作物は気温や降水量、日照時間など、それぞれの地域の風土に適した種類が選ばれている。
ところが気温が上昇すれば、その条件は変わってしまう。
もともと最適だった環境が変われば、作物にとっては生育条件が悪化することになり、当然ながら収量は下がる。従って「温暖化が起きると生産地の気温がそれぞれの作物の成育適温を超えることになり、穀物生産量が減少する」という結論になる。
しかしよく考えると、この前提はおかしい
世界の農民は気温上昇で干上がった土地で稲を育てようとしたり、毎日雨が降るようになった土地でサボテンを育てようとするほど愚かではない。
耕作している土地の風土が変われば、別な土地を求めて移動するか、新たな風土に適した作物を栽培するようになるはずだ。
もちろん遺伝子改変などを行って品種改良し、今の穀物の生育適温を高温側にずらすことも可能だ。

陸地の土地あたりの生産性は寒帯や亜寒帯など気温の低い地域より、熱帯、亜熱帯、温帯など温暖な地域の方がずっと大きい。
温暖化が起きれば地球上では生産性の低い寒冷地が減り、生産性の高い温帯や熱帯の面積が増加することになる。世界の気温が1、2度程度上がることで、地球全体としての食糧生産力が下がるはずがないのだ。
世界地図を眺めてみれば、現状では世界の陸地のうち、寒冷地が大きな面積を占めていることが一目瞭然だ。
ユーラシア大陸北部には広大なシベリアが寒帯、亜寒帯に広がっている。全土が氷で覆われているデンマーク領グリーンランドだけで日本の5.7倍の面積だ。アメリカ大陸もカナダ北部やアラスカ州など北極圏近くに広大な土地がある。
南半球にはオーストラリア大陸の2倍近い広さの南極大陸がある。
温暖化が起きると、これまでは農地がほとんど存在しなかったそれらの土地の気候が穀物栽培や牧畜に適したものに変化する。それによって世界の農業適地は飛躍的に拡大する。

前述の地球環境研究チームのシミュレーションでは、IIASA(国際システム解析研究所)の世界気候データを用いて自然条件下の潜在的生産力(NPP)を現在と地球温暖化後で比較した。
すると国別では特にロシア、カナダで温暖化の恩恵が大きく、潜在的な農業生産力はロシアが現在の5倍以上、カナダは8倍以上にも激増することが判明した。中国の生産力も2倍以上となる。ブラジルもインドも増え、減るのはアメリカぐらい(3割減)という結果となった。
世界全体としては前述のように、現在に比べて167%、約2.7倍にも生産力が増えるという。

漁業についても同様である。
海中の食物連鎖は植物プランクトンが基礎となっている。
植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、それらのプランクトンを小型のエビやイワシやサンマなどの魚類が食べ、それをマグロやカツオなど大型の魚類が食べ……という順で食物連鎖が回っている。
その植物プランクトンは水温が高い方が増殖率が高い。
筆者宅の庭の小さな池でも冬は水が澄んでいる。水温が下がってプランクトンが減ってしまうためだ。魚も底の方に隠れてしまって動かなくなる。春になって水温が上がると、隠れていた生き物たちが一斉に活動しはじめる。
日本の近海も同じだ。夏はプランクトンが増えて濁っているが、冬はその逆で澄んでいる。冬には生き物の活動は鈍り、釣りをしてもなかなか釣れない。
海水温が上昇するほうが海の生物生産性は上がるのだ。
当然、魚もたくさん獲れるようになる。水温による海中生物の生産性の差は圧倒的だという。

考えてみれば当然のことではある。
植物は暖かいほうが育ちがよい。二酸化炭素が多いほうが育ちがよい。
また植物は水が多いほうがよく育つ。気温が上がれば海面からの水の蒸発量も増えるから、地球全体で降水量が増し、植物が育ちやすくなる。
植物がよく育てば、それを餌にする動物も増える。
地球温暖化は生物が増える上でプラスの要素ばかりなのだ。

今、「地球温暖化が進むと食料生産が打撃を受ける」と主張している研究者たちは、「人間の活動が地球環境に影響を与えるのはよくないことだ」「人間の活動で自然が変わってしまって、いいことが起きるはずがない。必ず悪い結果が出るはずだ」という色メガネに囚われて、少し考えれば当然予想できることを見逃しているのではないだろうか。

●地球温暖化で住める土地が広がる

地球温暖化でもう一つ良い点は、人類にとって居住可能な土地が大きく広がることだ。

地球温暖化を問題視する人たちは、「地球が温暖化すると海水面が上昇し、太平洋の島国が消滅する」と訴える。
たとえば「全国地球温暖化防止活動推進センター」のサイトでは、
「海水の温度上昇による膨張と氷河や氷床の融解により、20世紀の約100年の間に海面は19センチ上昇しました。このままでは21世紀中に最大82センチ上昇すると予測されています」
として、フィジー諸島、ツバル、マーシャル諸島などで生活に大きな影響が出ており、ツバルではニュージーランドへの移民が始まったこと、日本では1メートル海面が上昇すると全国の砂浜の9割以上が失われると予測されていること、などの問題を挙げている(「海面上昇の影響について」より)。

もちろんそれらは事実である。海抜の低い島嶼国の人々にとって、海面上昇はまさに天災であろう。
だが温暖化では海抜の低い土地が海に呑まれる一方で、これまで氷に閉ざされて人が住むのに適していなかった広大な土地で農業ができるようになり、そこに多くの人が住めるようになる。
温暖化によって増える居住適地の面積と、海面上昇で失われる土地の面積とを比べると、増える土地の方がはるかに広い

島嶼国のみなさんにはお気の毒だけれども、人類全体としてはずっとプラスなのだ。
海面上昇で土地が減ってしまった国の人たちは、これから暖かくなって住みやすくなるはずのカナダやロシアへの移住を検討してみてはどうだろう。

ちなみに「日本では1メートル海面が上昇すると全国の砂浜の9割以上が失われる」という表現は、「ためにする議論」だと筆者は感じる。
砂浜は波打ち際にあるので、海面が上昇すれば今の砂浜は水没する。だが海面が上昇すれば、新たな波打ち際に新たな砂浜ができる。
そんな当たり前のことを無視して「地球温暖化で日本の砂浜がなくなる」的な言い方をするのは、いかがなものだろう。

食料生産力が増え、居住可能な土地が増える。
未来永劫同じ土地に住み続け同じ作物を作り続けたいなどと頑迷なことさえ言わなければ、地球温暖化は人類にとって明るい未来なのである。
それなのになぜ多くの人が懸命になって地球温暖化を止めようとしているのか、筆者には理解できない。
地球温暖化防止を主張する人たちは、人類による環境改変を憎むあまり、「今の土地が今の作物を育てるのに暑くなりすぎたら、今は寒すぎる土地が適温になる」とか「海面が上がって今の砂浜が水没したら、新しい砂浜ができる」といった、子どもでもわかる理屈が目に入らなくなっているように見える。

食糧危機論者にしても、もし人口爆発を心配するのであれば、どんどん二酸化炭素を排出し地球温暖化を加速して、食料生産力を高め居住可能地域を増やすべきだろう。しかし実際にはそうした人たちはおしなべて地球温暖化を目の敵にしている。
筆者が考えるに、おそらく食糧危機を心配する人たちと地球温暖化を心配する人たちは、共通点が多いのだと思う。
心配性で、現状が変わることに不安を感じる人たちなのだ。
食糧危機論者もまた「世界の人口は爆発している。世界の土地はもう増えない」という脅迫観念に囚われ、誰にでもわかるはずの事実が見えなくなっているのである。

●恐ろしいのは温暖化ではなく寒冷化

上で見たように地球温暖化が農業生産力を飛躍的に高めるとすると、温暖化の進行によって食糧危機の心配はさらに遠のくことになりそうだ。
だがまだ問題は残っている。
それは地球寒冷化――氷期到来の可能性である。
気候変動は、温暖化だけではない。

猛暑だった2018年の夏、ネットニュースを見ていたら、『酷暑の中、なぜ地球は20年後に「ミニ氷河期」に突入するのか』という記事があった。執筆者は京都大学の鎌田浩毅教授。地球科学を専門とし科学全般について多くの著書を上梓している京大きっての人気教授で、筆者も地球科学関連の取材でお話を伺ったことがある。記事は、
「この夏は世界的に異常な暑さが続いている。しかし、実は、いまの地球は「温暖化」ではなく「ミニ氷河期」に向かっているという事実をご存知だろうか。遠い未来の話ではない。早ければ約20年後に、である」
という内容だった(太線は筆者)。

鎌田教授によれば、数十万年単位の時間軸で見れば、地球は現在、氷期に向かう途中であるという。
もう少し短いスパンで見ても、8~12世紀の平安時代は今よりも温暖だったが、14~18世紀はそれより気温が下がっている。
現代は長期的に地球が寒冷化に向かう途中の、一時的な高温期なのだ。

地球の気温は太陽からくるエネルギーの量に支配されている。
太陽の活動度は表面に見える黒点で判断できる。
今から300年ほど前、1645年から1715年までの70年間は太陽の黒点が減って世界中が寒冷化、地球の平均気温は1.5度ほど下がった。これが「江戸小氷期」であり、ヨーロッパではロンドンのテムズ川やオランダの運河が凍結し、日本では大飢饉となった。
実は最近も当時と同じように、太陽の活動に低下のきざしがある。2014年をピークに、黒点の数が減少に転じているのだ。
こうした予兆を受けて、「太陽の活動は約20年後には現在の60%程度まで減少し、ミニ氷河期が到来する」と説く専門家もいるという。

太陽活動の問題に加えて、火山活動の問題もある。
20世紀には大規模な火山活動によって地球の平均気温が数度下がる現象が何回も観測されている。今後の数十年間においても大規模な火山活動によって一時的な寒冷化が起きる可能性は十分あり、それを予測する地質学者も少なからずいるという。

この記事を読んだ筆者は「え?」と思ってしまった。
「おいおい聞いてないぞ。地球は温暖化してるんじゃなかったのか?」
という話である。
このところ毎年暑い夏が続くもので、氷河期が迫っているなどという説はメディアでもまったく耳にすることはなかった。
太陽の黒点について調べてみたら、
氷河期の到来か? 太陽の黒点が消え始める時、地球の寒冷化が進む
「【速報】太陽が153日も活動していないことが判明! 氷河期突入の可能性は97%、33年間も地球冷却で人類滅亡へ!」
といった記事が見つかった。
それらの内容をまとめると、以下のようになる。

太陽はおよそ11年周期で極大期と極小期を繰り返している。
極大期には太陽が放つ磁気波が増大し、黒点が増える。このとき太陽はより多くの熱を放つ。極小期になると、磁気波は減少し熱の放出量も低下する。
前回の極小期は2009年。現在は極大期から極小期に向かう時期にあり、予測ではそれから11年後の2020年に極小期を迎えるはずだった。

2018年は2017年と比べて黒点の数が6割少なく、数週間にわたり黒点がない期間もあった。
黒点の減少自体は予想されたことである。しかし減少の程度、黒点消失期間の長さは予想を超えていた。極小期に入る時期が早まった可能性があり、その分だけ極小期が長引く可能性もある。
1645年から1715年までのマウンダー極小期(天文学ではこう呼ばれる)には70年間にわたり極小期が連続し、地球は小氷期(ミニ氷河期)に見舞われた。
今回も同じことになるのではないか――

この説に従えば、世界の気温は2010年代に入って急上昇していたが、それは太陽の活動が高まる時期だったからで、これから数年は逆に太陽が極小期に向かうので、地球が受ける熱量も下がり、気温も落ち着いてくることが予想される、ということになる。
それが行き過ぎると小氷期になってしまう――というわけだが、これに反対する記事も含めて一通り見た限り、今のところは「そういう可能性もある」というレベルのようだ。

「2030年までに太陽の活動が現在の60%まで低下する」という話は、イギリスのノーザンブリア大学のバレンティーナ・ザーコバ教授らが2015年に発表したレポートによるもので、これは「小氷期がやってくる確率は97%で、それが33年続く」というセンセーショナルなものだ。
ただこのレポートについても議論がある。
たとえばウィキペディアの「マウンダー極小期」の項では、
「太陽黒点の活動低下と、地球の気温の変化についてはまだよく分からない部分も残っている」
と述べられ、マウンダー極小期中の気温についても
「北半球平均気温は極小期の前後と比べて0.1 – 0.2度低下したのではないかとされている」
と、前出の記事に比べて低下幅が10分の1になっている。

より長期的な視点から、地球が寒冷化に向かっているという指摘もある。
「過去3000年間加速し続ける地球の寒冷化を止めることはできない : 南極とグリーンランドの氷床コアが語る地球過去45万年のサイクルから見る「今はまさに氷河期突入直前」だという強力な示唆」という記事では、南極や北極圏のグリーンランドの氷床を掘削して取り出したコアを分析した結果を紹介している。
それによれば、
過去45万年の間、地球は10万年周期で気温の上昇と下降のサイクルを繰り返している
その中で温暖な期間は1万年ほどと、寒い期間に比べて短い」
「現在は比較的温暖な期間に相当する」
現在の温暖な期間は1万~1万1000年ほど続いており、そろそろ気温が低下し始める時期にきている」
「1万年前~3000年前までは温度変化がほとんどなかったが、3000年前からわずかずつ気温が下がり始めている
「過去3000年間の気温低下は1000年あたり0.14度である」
といった事実が判明しており、過去45万年のデータを見るかぎり、
今後、地球では数千年単位で寒冷化が進行していく可能性が高い
と考えられるという。
こちらは鎌田教授の説明と一致している。

一方、「地球環境研究センター」のサイトには、この問題についての研究員顔出しによる解説がある。
こちらは「地球で過去、周期的に繰り返されてきた氷期と間氷期の気候変動は、主として地球が受け取る太陽エネルギー量(日射量)の変動に起因すると考えられているが、20世紀後半からの温暖化は、日射量変動のみでは説明できない」とし、
「2万~10万年スケールの日射量変動は理論的に計算でき、日射量変動による将来の氷期が今後3万年以内に起こる確率は低いと予測されています。近い将来に寒冷期が始まるとは考えられていません。」
と、前の記事とは真逆の結論を述べている(太線は筆者)。
鎌田教授も日本を代表する地球科学者の一人なのだが、地球環境研究センターは国立環境研究所の一部門でもあり、後者が気候問題についての日本の公的機関による公式見解と見てよいだろう。
もっともこのセンターは地球温暖化防止を旗印にしている機関なので、「実は地球は寒冷化に向かっています」などと公に認めるはずもない。
その点は割り引いて考える必要がありそうだ。

以下は筆者の結論。
氷床コアの分析から示唆される通り、この先1000年で地球の平均気温が0.14度下がったとしても、その程度では人類の生存に大きな脅威とはなりそうもない。
地球の気温が既に100年以上も上昇トレンドにあることを考えれば、11年周期で訪れる黒点減少に伴う太陽の活動低下にしても、気温に大きな影響があるとは思えない。
多くの研究者が指摘する通り、地球は今、100年単位の温暖化の途上にあると見るべきだ。
一方で1万年単位で見れば温暖な期間が終わりに近づいていることも事実であり、油断は禁物だ。

地球科学的には、現代は氷河時代(地球上に大陸並みの大きさの氷床が存在している時代)に属するが、その中にあっては比較的暖かい「間氷期」とされる。
氷河時代の中でも中緯度地域まで氷河や氷床に覆われるような時期を「氷期」といい、最後の氷期は7万年前から1万前まで続いた。
この時代にはヨーロッパの半分は氷に覆われ、地球の生物生産性は極端に低かったと考えられる。
もし今の地球が突然、1万年前の氷期の気温に戻ったとしたら、世界の食糧生産力は激減し、人類の過半数は餓死するだろう。
食糧の奪い合いで世界中で暴動と殺し合いが起き、国同士の戦争も始まるだろう。
人類にとって文字通りの地獄が出現することになる。

そこまでいかなくとも、地球の気温が今より低かった14世紀から18世紀にかけては世界各地で飢饉がしばしば起きていた。
日本では1993年に、夏の気温が平年より2度から3度も低かったために米が作況指数74という不作となり、「平成の米騒動」と言われる騒ぎに発展している。
当時は筆者も米問題の取材で忙しかったものだ。この年の冷夏はフィリピンのピナツボ山の噴火が原因とされる。

生育期の気温が低いと、穀物の収穫量は極端に落ちてしまう。
日本やヨーロッパではここ数年、毎年のように「記録的な猛暑」と騒がれているが、そのために米や小麦の収穫量が大きく落ちることはなかった。
だがもしここ数年「記録的な冷夏」が続いていたら、どうだったろう。
米も小麦も不作の連続で、93年どころではない大騒ぎになっていたはずだ。

実際に日照量の低下で小氷期が始まったり、火山活動の影響で世界の気温が何度も下がるようなことになったら、食糧生産に与えるマイナスの影響は温暖化の比ではない。それこそ食糧危機が本当になってもおかしくないし、それが現生人類滅亡のきっかけになる可能性もある。
そうしたことがいつ起きるかはわからないが、はっきりしているのは、長いスパンで見ればいずれ必ずそういう時期はくるということだ。
「食糧危機が気になるのなら、心配すべきは地球温暖化ではなく気温が下がること」
なのだ。
逆に今のような地球温暖化が続くかぎり、世界の食糧が不足することはない

ここまで考察を進めてくれば、結論は明らかだろう。
地球温暖化は人類にとって決して脅威などではなく、むしろ人類存続の上で最大の危険である地球寒冷化と氷期の到来を遠ざけてくれる、福音そのものなのだ。
それを全世界の国が協力して妨げようとするなど、筆者の目から見ると「どうかしている」としか思えない。
筆者としては世界の科学者の予想を裏切って突然氷期が始まったりすることなく、今後もできるだけ長期にわたって適度な温暖化が続くことを、自分と地球人類のために願うばかりである。

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